「もの」のざわめきに声(ことば)をあたえる発話行為が、ものがたり(物語)である。『源氏物語』や『平家物語』に始まり、能、浄瑠璃、歌舞伎を生みだし、さらに江戸の戯作小説をつくりだした物語の言語空間は、日本の「近代」とどのように出会ったのか。幅広い射程で文学を捉え続けてきた著者が磨き上げた物語論の決定版。
はじめにーーものがたりとは何か
1 主体/自我という病
ラフカディオ・ハーンと近代の「自我」
王朝の物語から近代小説へーー語りの主体から「自我」へ
2 近代小説と物語
泉鏡花の「近代」
泉鏡花、魂のゆくえの物語
北村透谷と他界、異界
3 物語の声と身体
声と知の往還ーーフォーミュラ
踊る身体、劇的なるもの
オーラル・ナラティブの近代
4 物語/テクスト/歴史
ものがたりの書誌学/文献学
物語テクストの政治学
歴史語りの近代
歴史学と「物語」史観について
おわりにーーものがたり(物語)論のゆくえ
付 記
索 引