国家が「愛国」の対象となったのは歴史的偶然にすぎず、人は国を愛さないこともできる。愛の対象の実相を追って、キケロ、アウグスティヌス、ヴェイユ、ミュラー、福沢諭吉、清水幾太郎など古典古代から現代までの多様な愛国論を渉猟し、愛国の構造を追究した野心作。無自覚な国家信仰を掘り崩すために。
序 章 愛国という問題
第1章 愛国の系譜
1 一七世紀以前のパトリオティズム
2 一八世紀のパトリオティズム
3 近代日本における「愛国」の成立
4 パトリオティズムとナショナリズム
第2章 愛国の対象
1 政治共同体としての祖国
2 カントリーという概念とその周辺
3 現代パトリオティズム論における「祖国」
4 「祖国」の多様性
第3章 愛国的であるということ
1 忠誠としての愛国
2 自己犠牲としての愛国
3 愛国的な感情
4 現代における愛国の深層
第4章 愛国的である理由
1 愛国的であるべきではないという主張
2 「その国が評価基準を満たすから」という理由
3 「自分の国だから」という理由
4 愛国とアイデンティティ
第5章 愛国的ではないということ
1 外国人
2 非国民・売国奴・国賊
3 「聖性の移転」と宗教概念の問題性
4 現代パトリオティズム論における「愛国的ではないこと」
5 ナショナル・アイデンティティの聖性という問題
終 章 愛国の彼方へ
注
参考文献
あとがき
人名索引・事項索引