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受刑者が互いの体験に耳を傾け、本音で語りあう。そんな更生プログラムをもつ男子刑務所がある。埋もれていた自身の傷に、言葉を与えようとする瞬間。償いとは何かを突きつける仲間の一言。取材期間一〇年超、日本で初めて「塀の中」の長期撮影を実現し、繊細なプロセスを見届けた著者がおくる、圧巻のノンフィクション。
プロローグ 「新しい刑務所」
1 ある傍観者の物語
傍観者から参加者へ/「常に、そうですね」/二つのカリキュラム/当事者スタッフの存在/日本でのTCを可能にしたもの
2 感情を見つめる──四人の物語
拓也/真人/翔/健太郎/イライラの身体反応/「感情の筋肉」を鍛える/相反する感情
3 隠さずに生きたい
さざ波とともに終わる食事/最近、心が動いたこと/「感盲」とトラウマ/祈るような語り/芽吹きに立ち会う/撮影の困難/突き破れなかった壁
4 暴力を学び落と
受刑者による授業/暴力を特定する/使われなかった言葉/長い道のり/手作りのハンカチ/一時間おきの電話/暴力に代わる方法を手にするまで/記憶のない加害、記憶のある加害/DVを学び落とすために
5 聴かれる体験と証人──サンクチュアリをつくる
年表をつくる/混ざり合う被害と加害/照れ笑いと一緒に/支援員も打ち明ける/映らなかった余暇時間/「特別な場所」の準備
6 いじめという囚われ
お金がすべてに優先する/母には言えなかった/訪れた転機/加害者側の語りを聴いて/いじめの影
7 性暴力 光のまだ当たらない場所
スコッティの告白/男性の性暴力被害/「葛藤の手紙」を読む/なぜ被害者に向けて書いたか/破り捨てた手紙/性的虐待のあと/一軍コンプレックス/多くを知らない
8 排除よりも包摂
決意表明とカミングアウト/「なんか皆と違う」感覚/二つの名前をもつ母/「アンチな反応」/心を開かせ合う場所/削除されかかった場面
9 助けを諦めさせる社会
ソーシャルアトム/施設の内と外/思い出がない/暴力の「世代内連鎖」/「嘘つきの少年」を書く
10 二つの椅子から見えたもの
事件について語る/空の椅子に向かって/幸せになりたい自分/死刑囚Aとの対話/生まれ変わり
11 被害者と加害者のあいだ
自己憐憫/シナリオが書き換えられる瞬間/修復的司法との出会い/螺旋階段/二年目の真実/「償いとは何か?」/同じ船に乗り合わせた者たち
12 サンクチュアリを手わたす
最後のサークル/仮釈放で父親のもとへ/出所日/刑務所撮影の最終日/みんなが証人/手わたされた種と土
13 罰の文化を再考する
保護会の実際/二つの入口/コミュニティ・サークル/静かな施設で/「囚人化」のプロセス/相反する二つの文化/刑務所の未来/私たちの安全観を問い直す/アボリションのリアリティ
エピローグ 「嘘つきの少年」のその後
参考文献
あとがき