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19世紀の日本において、時代の要請と社会の動向の複雑な作用の交錯のうちに、青年たちはいかにして文学史を作り上げていったのか。最初の日本文学史の構想とその生成過程を、1880年代当時の東京大学文学部の史料精査と、そこで学び育った研究者たちの著作の分析を通して考究する。原著は第22回渋沢・クローデル賞受賞。
読者に
日本語版に寄せて
凡例
序
第一章 一九世紀における日本文学の範囲
第一節 ロニーの「日本人の文学」(一八八三)とアストンの『日本文学史』(一八九九)
第二節 内包と外延
第三節 一九世紀半ばにおける潜在的な文学コーパス
1 学問の対象としての中国古典
2 文章
3 日本の正典的テクスト
4 「雅」と“文学的”創作
5 俗なる「遊芸」の世界
「遊芸」に属する中国文学
江戸時代の小説
ノンフィクション
庶民的な詩
6 語り物と劇場
第四節 読書と読者
第二章 最初の国文学史の生成過程(一八九〇年
第一節 著者たち
1 大志を抱く青年たち
2 グループとしての肖像
第二節 東京大学文学部
1 和漢文学科
教育課程
教授陣
2 古典講習科
設置の経緯
教授陣
教科内容
第三節 学生たちと教授陣
第三章 一八・一九世紀における歴史・文学・国民 - 比較文化的素描
第一節 ヨーロッパの文学史の影響?
1 西洋の書物との出会い
文学史
選集と論考
2 日本人の先駆者はいない?
3 「影響」とその限界
第二節 国民文学の歴史を可能にする諸条件
1 歴史
2 国民
3 文学
4 一国の…文学の…歴史
第三節 前近代日本における歴史、文学と国・国民
1 近代的概念としての歴史・国民・文学の出現
2 内在的発展の諸要素
歴史
国民
文学
第四章 一八八〇年代の力学の中で
第一節 「古代的秩序への回帰」の挫折
第二節 漢学の復興
第三節 ナショナル・アイデンティティの確立
第四節 出版・ジャーナリズム・教育
第五節 公共圏と批判的言説
第六節 文学創作の変容
第五章 日本文学のコーパスへ向けて(一八九〇年)
第一節 上田万年の『国文学』
1 文学者年表
2 アンソロジー
作者
テクスト
どんな詩が?
どんな散文が?
3 徳川時代後期
第二節 芳賀と立花の『国文学読本』
第三節 三上と高津の『日本文学史』
第四節 博文館の『日本文学全書』
第五節 古典文学と近代文学
結論 芳賀矢一はギュスターヴ・ランソンか?
注
参考文献
訳者あとがき