「俺は国際的の居候」と嘯く大正時代の作家、大泉黒石。ロシア人を父に持ち、複数語に堪能なコスモポリタンだった。『中央公論』連載の『俺の自叙伝』で一世を風靡するが、才能を妬まれ、虚言家だと罵られ文壇追放、忘れられた作家となる。国家も民族も飛び越え、人間性の普遍へと向かおうとした異端の文学者が、今、蘇る。
一 虚言の文学者
二 トルストイを訪問した少年
三 二冊のロシア巡礼記
四 黒石、売り出す。
五 『俺の自叙伝』
六 周縁と下層
七 とうとう文壇追放
八 『露西亜文学史』1
九 『露西亜文学史』2
十 老子の肖像1
十一 老子の肖像2
十二 『血と霊』の映画化
十三 差別と告白、そして虚無
十四 幻想都市、長崎
十五 混血と身体の周縁
十六 峡谷への情熱
十七 奇跡の復活『おらんださん』
十八 戦時下の著作
十九 戦後の零落
二十 黒石の文学
あとがき
大泉黒石 年譜