デモクラシーの理想とされるアテネの直接民主制は,実は自由ゆえに平等であった古代イオニアのイソノミア(無支配)再建の企てであった.イオニアの自然哲学をイソノミアの記憶を保持するものとして読み解き,アテネ中心のデモクラシー神話を解体する.『世界史の構造』を経て,社会構成体の歴史の起源を刷新する野心的試み.
はじめに
序 論
1 普遍宗教
2 倫理的預言者
3 模範的預言者
第一章 イオニアの社会と思想
1 アテネとイオニア
2 イソノミアとデモクラシー
3 アテネのデモクラシー
4 国家と民主主義
5 植民とイソノミア
6 アイスランドと北アメリカ
7 イソノミアと評議会
第二章 イオニア自然哲学の背景
1 自然哲学と倫理
2 ヒポクラテス
3 ヘロドトス
4 ホメロス
5 ヘシオドス
第三章 イオニア自然哲学の特質
1 宗教批判
2 運動する物質
3 制作と生成
第四章 イオニア没落後の思想
1 ピタゴラス
a 輪廻の観念
b 二重世界
c 数学と音楽
2 ヘラクレイトス
a 反民衆的
b 反ピタゴラス
3 パルメニデス
a ヘラクレイトスとパルメニデス
b ピタゴラス批判
c 間接証明
4 エレア派以後
a エンペドクレス
b 原子論
c ポリスからコスモポリスへ
第五章 アテネ帝国とソクラテス
1 アテネ帝国と民主政
2 ソフィストと弁論の支配
3 ソクラテスの裁判
4 ソクラテスの謎
5 ダイモン
6 ソクラテスの問答法
7 プラトンとピタゴラス
8 哲人王
9 イソノミアと哲人王
注
附録 『世界史の構造』から『哲学の起源』へ
岩波現代文庫版あとがき
古代ギリシア関連地図/古代ギリシア史年表/思想家年表