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タイトル |
排除の現象学(ハイジョノゲンショウガク) |
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〈かれら〉を攻撃し、かれらと異なる〈われら〉であることに安寧を求める社会に、未来はあるのか。いじめ、ホームレス殺害、障害者施設設置反対運動、宗教集団への批判、超常現象への傾斜ーー80年代に世間を賑わせた数々の事件から、異人が見出され生贄とされる、共同体の暴力を読み解く。時代を超えて切実に響く傑作評論。
はじめに いま、暮れなずむ黄昏の異人たち
陽だまりの老人は異人である
現代版・姥棄て伝説
少年たちが老人を襲う時
汝の隣人は汝自身である
序章 さらば、寅次郎の青春
棺桶のなかの寅次郎
寅次郎はパンツを脱がない
植物的異人としての寅次郎
寅次郎という古さびた生の様式
第一章 学校/差異なき分身たちの宴ーーいじめの場の構造を読む
学校に追われる子どもたち
冗談関係あるいは全員一致の暴力
教室のなかの異分子たち
抽象化または規則なきゲーム
強迫的なるものとしての学校
供犠という分身たちの宴
排除にむけたあらたな差異の発見
差異の戯れとしてのファッション
第二章 浮浪者/ドッペルゲンガー殺しの風景ーー横浜浮浪者襲撃事件を読む
浮浪者とはだれかという問い
市民たちの浮浪者狩り
野にある異人たちの風景
交易の不在としての浮浪者
浮浪者という禁制の鏡
境界とその侵犯者たち
かぎりなく日常化された供犠
第三章 物語/家族たちをめぐる神隠し譚ーーイエスの方舟事件を読む
供犠の現場としての物語
神隠し譚という内なる眼差し
神隠しをめぐるいくつかの物語
マス・メディアのなかの物語
拡散する家族たちの風景
イエスの方舟という異界
妖術師または供犠という主題
コムニタスとしての方舟
第四章 移植都市/鏡の部屋というユートピアーーけやきの郷事件を読む
いま逐われる異人たち
カオスを排除した移植都市
ニュータウンという危うい日常
ユートピアとしての鏡の部屋
親密な関係世界への回帰
全員一致にあらざる供犠
第五章 分裂病/通り魔とよばれる犯罪者たちーー精神鑑定という装置を読む
舗石の下の異人たち
通り魔が分裂病と出会う場所
外部としての精神分裂病
精神分裂病⇆了解不能性⇆動機なき犯罪
負の物語の産出メカニズム
物語を拒む犯罪者たち
第六章 前世/遅れてきたかぐや姫たちの夢ーー1/2の少女マンガを読む
ここではない、どこか
前世への旅または自殺ごっこ
ダライ・ラマの転生
定型としての転生の物語
異界と交信する彼岸の人
少女らの転生譚のはてに
たそがれのかぐや姫たち
終章 失われたヒーロー伝説
丁稚どんはどこへ行ったのか
異形のヒーローたちの黄昏
乞食と祭りの失われた都市にて
シンちゃんをめぐる風景
補章 『童夢』を読みなおす
あとがき
筑摩書房版あとがき
ちくま学芸文庫版あとがき
岩波現代文庫版あとがき