おちこぼれの女性ジャーナリストが異国の砂漠の地で掴んだ、
自分しかできない仕事、そして、人間のほんとうの幸せとは
フリージャーナリストとしての活躍の道が拓けずくすぶっていた寿美佳(すみか)は、摂氏六十度を軽く超える砂漠の地で、鉱石を運ぶトラックに乗っていた。
ここはオーストラリアでも「デッドエンド」と呼ばれる地帯。この先の鉱山で、元引きこもりの日本人労働者や、海外の政治犯が強制労働に従事させられているという疑惑を聞きつけて、記事を書いて一山当てようと潜入取材に乗り込んだのだ。金がない寿美佳のスポンサーとなったのは、夫の研究者・クセナキス博士がここに閉じ込められていると訴える博士の夫人だった。
博士を救い出すという任務も帯びながら、命からがら苛酷な砂漠を越え現地にたどり着いた寿美佳だったが、そこで出会った博士をはじめとする3人の労働者が語ったのは、寿美佳が全く思いもよらない背景だった……。
ここは見捨てられた場所、そして、途方もなく自由な土地ーー
「他の場所では生きられなくても」、今、自分の身体が、能力が、拡張していく。
人生の本質や、生と死の尊厳を、外から判断できるのか。
ほんとうの幸せとは何かに迫る著者の真骨頂。