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タイトル |
紫式部ひとり語り(ムラサキシキブヒトリガタリ) |
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「この私の人生に、どれだけの華やかさがあったものだろうか。紫の上にちなむ呼び名には、とうてい不似合いとしか言えぬ私なのだ」--。今、紫式部が語りはじめる、『源氏物語』誕生秘話。望んでいなかったはずの女房となった理由、宮中の人付き合いの難しさ、主人中宮彰子への賛嘆、清少納言への批判、道長との関係、そして数々の哀しい別れ。研究の第一人者だからこそ可能となった、新感覚の紫式部譚。年表や系図も充実。
序章
一 会者定離───雲隠れにし夜半の月
出会いと別れ/悩む友達/「姉君」と「中の君」/「姉君」の死
二 矜持───男子にて持たらぬこそ、幸ひなかりけれ
おこぼれ学問/ひけらかし厳禁/名家の矜持/優雅な曾祖父たち/没落/父の転進/父の浮沈
三 恋───春は解くるもの
都からの恋文/父、越前守に/楽しい男/晩桃花
四 喪失───「世」と「身」と「心」
宣孝の死/世というもの、身というもの/「心」こそ世界
五 創作───はかなき物語
物語を支えに/帚木三帖の誕生/『源氏の物語』へ
六 出仕───いま九重ぞ思ひ乱るる
女房になる/冷たい同僚たち/「惚け痴れ」から「おいらか」へ/つながる心
七 本領発揮───楽府といふ書
御懐妊/「日本紀の御局」/「新楽府」進講/私にできること
八 皇子誕生───秋のけはひ入り立つままに
お産近づく/お産始まる/物の怪たち/皇子誕生
九 違和感───我も浮きたる世を過ぐしつつ
水鳥たち/変わってゆく私/内裏の盗賊事件
十 女房───ものの飾りにはあらず
『源氏の物語』の誉れ/政敵死す/女房とは何か/『枕草子』の力/伝えたい相手
十一 「御堂関白道長妾」───戸を叩く人
好きもの/渡殿を訪うた人/召し人たち
十二 汚点───しるき日かげをあはれとぞ見し
書き足りないこと/いじめの記憶/糊塗/寛弘七年の私
十三 崩御と客死───なほこのたびは生かむとぞ思ふ
弟、惟規/帝の御不予/『源氏の物語』の不思議/惟規、客死
終章 到達───憂しと見つつも永らふるかな
賢后のもとで/死期を悟る/形見の文/初雪
主要参考文献
紫式部関係年表
あとがき
文庫版あとがき