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タイトル |
わたしは、あなたとわたしの区別がつかない(ワタシハアナタトワタシノクベツガツカナイ) |
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15歳、自閉症当事者が書き下ろす
みずみずしくも胸に迫るエッセイ
自閉症者は何を考えているのか?
世界がどういう風に見えているのか?
その心の声を真っすぐに書いた自伝の登場!
(--五章 中学生編「あなたとわたしの区別がつかない」より)
わたしは、あなたとわたしの区別がつかない。
自分と他人の区別がつかないのは赤ん坊だそうだ。赤ん坊が成長して、一歳ごろに自分以外に人間がいることに、気がつく。これを発達と言う。保健の教科書にそう書いてある。二歳ごろになると、他の人は、自分と違うことを考えていると理解する。このあたりで、世界には自分と、自分ではない誰かがいるとわかるのだ。
わたしは精神の一部が、いまも二歳以下であるようだ。わたしの中に二歳児がいる。怖くて、しかし面白い。わたしがわたしであるように、同じように誰かも誰かである。自分でない誰かは、わたしとは違う人間である。別々の心を持っている。ゆえに、わたしが体験したことは、わたしだけのものである。あなたが体験したことは、あなただけのものである。説明されれば理解はする。何度も口に出して言ってみる。だがしかし、ほんとうのところではわからない。わたしが知っていることは、みんなも知っていると思ってしまう。
【著者プロフィール】
4歳の時に自閉スペクトラム症の診断を受け、小学校では支援級に在籍。中学受験を経て現在は私立高校に通う。
中学3年時に夏休みの課題の作文「自閉症を持つ私から見た日常」が文部科学大臣賞を受賞。
自身が経験した、外見や行動が相手に与える誤解、コミュニケーションに生じる不調や、脳の特性による世界の見え方などを綴り、SNSでも大きな話題となった。