幻に終わった1940年東京オリンピック。
代わりに計画された、新たな国際競技大会。
その実現と参加に向け、海を越えた友情を信じて奔走する二人の若者がいた。
立ちはだかるのは、官僚、政治家、陸軍、チームメイト……。
戦時下の知られざる交渉の歴史を克明に描く。
日中戦争の拡大を受け、東京オリンピックの返上が決まった1938年。大日本体育協会は、オリンピックに変わる国際大会の開催を画策していた。立教大学野球部出身で、協会理事長・末広の秘書を務める石崎は、体協幹部や陸軍などの政治的な思惑に疑念を抱きながらも、平和の象徴としての代替大会を開催するべく「面従腹背」な面々と交渉を重ねていく。一方、ハワイにある日系人野球チーム「ハワイ朝日」のマネージャー・澤山の元に、旧知の石崎から電報が届く。返上された東京オリンピックの代わりとして開かれる「東亜競技大会」に、野球のハワイ代表として参加してくれないか、という招請状だったーー。
【著者プロフィール】
堂場瞬一(どうば・しゅんいち)
1963年生まれ。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年、野球を題材とした「8年」で第13回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。スポーツ小説のほか、警察小説を多く手がける。「ラストライン」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズなど、次々と人気シリーズを送り出している。ほかにメディア三部作『警察回りの夏』『蛮政の秋』『社長室の冬』、『宴の前』『ホーム』『共謀捜査』『ボーダーズ』など著書多数。