|
タイトル |
ミニシアターの六人(ミニシアターノロクニン) |
|
上映最終日前日、午後四時五十分の回の奇跡
銀座のミニシアターで、二年前に亡くなった末永静男監督の追悼上映が行われている。二十一年前に公開された『夜、街の隙間』、上映は一週間だけ。最終日前日、午後四時五十分の回。天気は雨、観客は六人だった。
この映画館で働いていた三輪善乃は、公開当時にチケット売場の窓口にいた。山下春子にとっては、大学の同級生と成り行きで観に行った作品だ。自主映画を撮っていた安尾昇治は、末永のデビュー作でその才能を目の当たりにし、道を諦めた過去がある。沢田英和は、この作品に元恋人との苦い思い出があった。誕生日デートのはずだった川越小夏は、一人でスクリーンを眺めている。映画監督を目指す本木洋央は、生物学上の父親が撮った作品を観に来ていた……。
観客たちの人生と、『夜、街の隙間』のストーリーを行き来しながら、出会いとすれ違い、別れを繰り返す日々の中にある奇跡を鮮やかに描く。
『ひと』『まち』『いえ』の著者が、銀座という街とミニシアター、そこに集う人々、そして映画への愛を描き切った渾身の人生讃歌。
限られた人生の中で「映画」と出会えた幸福を、この小説はあらためて教えてくれた。
──脚本家・向井康介さん(解説より)
【編集担当からのおすすめ情報】
デビュー前、シナリオを書いていたこともあるという小野寺史宜さんが、ご自身のシナリオをモチーフとして、スクリーンに映し出される物語とスクリーンの前に座る観客たちの世界を描きます。
2019年本屋大賞第2位に選ばれた『ひと』以降、『まち』『いえ』と続く三部作で、場と人間たちが織りなす感動を描き続けている著者が、「銀座」の「映画館」に集う「観客」を描きます。
脚本家の向井康介さんによる解説は、物語の魅力はもちろんのこと、末永静男監督とその映画作品について、時代背景を含めて考察され、読み応え抜群です。