<b>第20回小林秀雄賞受賞作!</b>
《「音楽」というものの生々しさと理念を情熱的に撚り合わせながら、コロナ禍という盛り上がれない時代の中で、音楽の未来を探った。アクチュアルであり、「時間論」としても優れた論考。》
(文責・新潮文芸振興会事務局)
集うことすらできないーー。2020年代の世界を覆うパンデミック。「密閉・密集・密接」の営為が軒並み「不要不急」のレッテルを貼られ、音楽ライブやコンサートも次々と中止に。交響曲からオペラ、ジャズ、ロックに至るまで、近代市民社会と共に発展してきた文化がかつてない窮地を迎えている。その一方で、利便性を極めたストリーミングや録音メディアが「音楽の不在」を覆い隠し、私たちの危機感を麻痺させている。終焉か、それとも変化の契機か。近代文化の象徴たるベートーヴェンの≪第九≫を導きの糸に、コロナ後の音楽のゆくえを探る。