「人の気持ちがわからない」「同じ失敗を繰り返す」「極端なこだわり」……
ASD、ADHD、アスペルガーの謎に迫る!
近年、ドラマや小説の主人公に「発達障害」を思わせるキャラをよく見かける。
たとえば2016年にヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)の主人公・津崎平匡。彼は高学歴だが対人関係が苦手で応答が画一的、些細なことへのこだわりが強い、という設定。アメリカの人気ドラマ『クリミナル・マインド』の主人公リードは、FBIのエリート捜査官で、IQ187。彼は飛び級を繰り返してカリフォルニア工科大学で数学、化学、工学の博士号を取得し、驚異的な記憶力と分析力で難事件を解決する。しかし、他人の気持ちがわからず、空気が読めないため、周囲からは煙たがられている。
こうした発達障害の特性をもつキャラがポピュラーになった影響か、精神医療の現場では「自分は発達障害かもしれない症候群」がみられる。「他人の気持ちがわからない人」「空気が読めない」ことを家族や同僚から指摘され、外来を受診する人が増えているのだ。実際、人口の約5〜10%が該当するという研究報告もあり、周囲にこんな人がいる、と思い当たる人も少なくないだろう。
その一方で、誤解も蔓延している。動機が不可解な少年犯罪や猟奇的な事件で、根拠もなく「アスペルガー症候群」との関連が不適切に取り沙汰されたこともある。
本書は、日本初の「発達障害のためのデイケア」を運営する病院長が、
○発達障害とは何か?(正しい知識)
○彼らが抱えている問題は何か?(課題)
○どのように社会が受け入れていくべきか?(社会の対応)
……を、豊富な症例をもとに、初心者にもわかりやすく解説した作品だ。
事件の精神鑑定の裏側、天才(驚異的な記憶力、共感覚など)、歴史上の人物の例など、興味深い症例も盛りだくさん。
新年度を控えていろいろな人との出会いが増える中、必読の一冊だ。