八月十六日、京都“大文字”の夜。興奮にざわめく人混みに紛れて、一つの情事が進行していた。しかしその最中、人妻は送り火に見とれる男の前から姿を消した。
同じ時刻、油壺と三宅島の間では、人妻の夫が参加するヨットレースがおこなわれていた。女を見失い、呆然と東京に戻った男の耳に飛び込む夫のヨットでのクルーの死亡事故、そして、男の家のすぐ近所で人妻の遺体が発見される。これらの点は結ばれるのか。
鉄壁のアリバイ崩しに挑む本格推理「火と汐」。
ほかに「証言の森」
「種族同盟」(映像化作品「黒の奔流」原作)
「山」の計四篇を収録。
解説・大矢博子