大手出版社を定年退職後、カルチャースクールで小説講座を持つ澤登志夫、69歳。女性問題で妻子と別れて後も、仕事に私生活に精力的に生きてきた。しかし、がんに侵されて余命いくばくもないことを知るとスクールを辞め、人生の終幕について準備を始める。
講座の教え子・26歳の宮島樹里は、自分の昏い記憶を認めてくれた澤を崇拝し、傍にいることを望むが、澤はひとり冬の信州へ向かった。
澤は、最後まで自分らしく生きることができるのか。「ある方法」を決行することは可能なのか…。
プライド高く情熱的に生きてきた一人の男が、衝撃的な尊厳死を選び取るまでの内面が描きつくされ、深い問いかけを読者に与える傑作長編
解説・白石一文