時は玄宗皇帝統治下の唐。陽物を欠いた名家の貴公子・崔子龍(さいしりゅう)は、辺境民族の征伐に赴く唐軍に従軍し、宦官・辺令誠(へんれいせい)の策略にはまる。心酔する上官・高仙芝(こうせんし)を陥れた辺への復讐を誓う崔の前に現れた僧侶・真智(しんち)。崔子龍の幼馴染である恋人・杜夏娘(とかじょう)は数奇な運命を経て、皇帝の寵姫・楊貴妃に使える奴婢となりーー<安史の乱>へと至る権力闘争に翻弄される男たちと、虐げられてもしたたかに生きる女たちが乱世に躍動する歴史大河小説です。著者は同じ<安史の乱>を別の視点から描いた『震雷(しんらい)の人』で松本清張賞を受賞し、第2作の本作で今度は「日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞。
新しい英雄の登場
「魅力的で多彩な登場人物、謀略あり&裏切りあり&意外な真相ありで二転三転する展開、胸に迫ってくる人間ドラマ、現代社会にも通じる熱いメッセージ。これが本当にまだこの作家の二作目なのかと思うくらい、史実を胸熱のエンターテインメント小説に仕立て挙げる手腕に感嘆してしまう。」--解説・瀧井朝世さん