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タイトル |
呼吸器ジャーナル Vol.69 No.4(コキュウキジャーナル) |
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若手医療者が急性期呼吸器疾患の患者を診療する機会は多い。咳嗽や胸痛、呼吸困難といった症状で呼吸器疾患の患者が外来や救急室を受診することはよくあり、また全身倦怠感や意識障害といった非特異的な症状で発症することも稀ではない。今回の特集では、初期治療に携わる医療者を対象に、日頃診ることの多い呼吸器疾患についてまとめる。
呼吸というと「肺」と考えるかもしれないが、それだけではない。私たちが息を吸うためには、中枢神経からの呼吸刺激が脊髄と末梢神経を介して呼吸筋を動かし、胸腔内を陰圧にすることで、気道を通して空気が肺に送り込まれるという一連の流れをすべて正常に行う必要がある。そのため、薬物過量摂取のような中枢神経の抑制や、高位の脊髄損傷、脊髄前角細胞を障害し人工呼吸器の発展とも密接に関わりのあるポリオ、Guillain-Barré症候群のような末梢神経の障害、重症筋無力症のような神経筋接合部の疾患、筋ジストロフィーのような筋肉の疾患、後側弯症のような胸壁の疾患、気胸や胸水のような胸腔の疾患、上気道閉塞や喘息のような気道の疾患は、すべて正常な呼吸のメカニズムを障害して、呼吸不全の原因になる。もちろん、肺炎や肺水腫といった肺の病気から呼吸不全になることもある。これらはいわゆる「外呼吸」と呼ばれるプロセスだが、さらに、酸素を循環させて組織で利用できるようにする「内呼吸」も正常に行われている必要がある。一酸化炭素中毒やシアン化物中毒ではこの段階が障害される。このように呼吸不全の原因は多岐にわたる。
今回の特集では、様々な呼吸器疾患の中から、急性期疾患に特化して、身体診察や検査・画像の解釈から始まって、気胸、肺塞栓、上気道閉塞、喘息発作、COPD増悪、肺炎、喀血、肺水腫、胸水、一酸化炭素・シアン化物中毒、間質性肺炎急性増悪といったそれぞれの疾患の症状・診断・治療を整理する。また、SpO2やPaO2が低下する低酸素性呼吸不全と、PaCO2が上昇する高二酸化炭素性呼吸不全の機序と治療についての考え方を身につける。さらに、疾患によって、high flow nasal cannula(HFNC)やnon-invasive positive pressure ventilation(NPPV)をどのように使用するのかをまとめ、人工呼吸器が必要になった場合には、それぞれの疾患でどのように使い分けするのかを述べる。
いずれの項目も経験豊富な医師によって書かれており、「呼吸器疾患に遭遇したらとりあえずこの本」といえるような特集になった。急性期呼吸器診療のレベルアップを図りたい読者にぜひ読んでもらいたい。