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準平原の謎 盆地は海から生まれた(ジュンヘイゲンノナゾボンチハウミカラウマレタ) |
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100年間誰も疑わなかった「地形学の常識」に地質学者が挑む、第2弾!!
「準平原」とは、地表が長期にわたる侵食作用を受けて起伏が小さくなり、海面の高さ付近まで低下した、ほとんど平らな地形のこと(国土交通省東北地方整備局HPより)。
アメリカの地形学者ウィリアム・モーリス・デービスが100年以上も前に提唱した侵食輪廻説における最末期の地形で、地殻変動(隆起運動)が停止後、河川による侵食によって海面付近まで低くなった起伏の小さいなだらかな平原を指す概念です。
重要な点は、「準平原は陸上で河川によってつくられた地形である」と述べていることです。
日本列島には、標高の異なる起伏の小さい侵食小起伏面が知られています。
とりわけ、中国地方にはかなりの広がりをもつ明瞭な侵食小起伏面が数段あり、それらはアメリカの地形学者デービスが提唱した「準平原が隆起したもの(隆起準平原)」であるとずっと信じられてきました。
ところが、前著『分水嶺の謎 峠は海から生まれた』で考察したように、谷中分水界や片峠は、島と島の間の海峡が離水した地形でした。
それらが標高1000mを超す山地にも確認されることから、かつての海峡(海底)が大きく隆起していることを意味します。
中国地方の隆起準平原とされた地形を丹念に観察すると、平坦な地形はいずれも起伏の少ない分水界に囲まれていて、分水界には谷中分水界や片峠が確認されます。
ということは、谷中分水界や片峠が海峡だったころ、分水界に囲まれている起伏の小さい地形は……浅い海底だったのではないでしょうか。
デービスが提唱した
「準平原は陸上で河川によってつくられた地形である」
という考え方は、本当に正しいのでしょうか?
本書は、100年近く信じられてきた本邦地形学の常識(隆起準平原)を見つめ直し、谷中分水界や片峠を鍵として、その成り立ちの謎について解いていきます。