時系列解析の研究は,当初は時系列を確率過程からの標本とみなし,さまざまな時系列統計量の標本分布を導出することをメイン・テーマとして,理論的な研究が積み重ねられていた。しかし,近年のコンピュータの進展の中で,時系列データを比較的容易に分析できる環境が整い始め,それまでの時系列解析のフレームワークでは捉えられない諸現象に対して,新たな理論や方法が提案され,実際の分析も盛んに行われてきている。
本書は,時系列解析の統計理論に関して,中級から上級レベルのトピックスを中心に,いくつかの比較的新しいトピックも含めて解説した書籍である。はじめに,離散および連続時間確率過程の基礎理論を述べる。次に,非定常時系列統計量の分布の特性関数の導出や,分布関数の数値計算を解説する。後半では,単位根問題,共和分分析,長期記憶過程の統計的推測などの近年の話題を解説する。