近年の統計科学では、原因と結果の因果関係を正確に知ろうとするアプローチが盛んであり、これらのアプローチは一般に因果推論と呼ばれている。本書で扱う傾向スコアも、因果推論を主眼とする方法の一つである。一般的に、処置の有無をランダムに割り当てることのできない調査観察データでは、処置群と統制群の間に属性の違いが生じる。傾向スコアとは処置の有無に影響を与える複数の情報を集約した要約指標であり、この要約指標を用いて、あたかもランダム化実験が行われたかのように、処置群と統制群の元々の属性の違いを調整する。
本書では、第1章で傾向スコアの基礎となる方法や仮定をレビューし、第2章で傾向スコアのモデリングと評価の概要について説明する。また一般的な傾向スコア法(マッチング、層別化、逆確率加重、共変量調整)をレビューし、第3章では、これらの手法のうちいずれの方法を採用すべきなのかを検討する。さらに、第4章では、処置群と統制群のバランスをとるための個々の共変量の評価や調整後の因果効果の推定など、応用面で生じる問題について検討し、最終章は傾向スコアを用いるアプローチの限界についての議論で締めくくられる。
本書は傾向スコアを詳しく理解したい初学者や、観察データを用いた因果推論を行いたい分析者にとって最適の入門書である。
[原著: Propensity Score Methods and Applications, Sage Publications, Inc., 2018]