新たな権力者として天保の改革を推し進める水野越前守忠邦。その懐刀の鳥居耀蔵は策謀を遂行し側用人であった水野美濃守の領地と屋敷を取り上げ信州に追放することに成功する。さらに陰謀によって南町奉行矢部駿河守を追い落とし、自らが南町奉行となると、江戸には隠密の網が巡らされ、陰の権力者となった耀蔵に取り入りたい者たちが諜報を競った。改革による苛烈なまでの締め付けで町に怨嗟の声が満ちるなか、耀蔵らの専横を糺さんとする反撃が、静かに始まっていた──。改革を進める者、翻弄される者、ひと儲け企む者──それぞれの姿を活写する時代長編。