商人たちへの弾圧といえるほどの統制で経済が大混乱し、倹約令の徹底で市中には密偵が溢れ人心が動揺を極めるなか、将軍家慶の希望による日光参拝を実現して家慶の信任を得た水野越前守忠邦は、まさに絶頂期を迎えていた。水野の改革の夢は尽きない。ついに印旛開鑿事業が水野の政治生命を賭けて始まったが、工事は特殊な土壌のため難航し、その裏では腐敗が進んでいた。しかし成功を信じる水野には、まだ工事好調の報告しか届かない。一方、改革の重要な柱として策定した大坂十里四方上知令も、雲行きが怪しい…。天保改革の表裏両面を克明に描く時代長編。