“どこにでもある眺めとここにしかない眺めが交錯する”
これまで取りこぼしてきた日々の感情を忘れないために短歌を詠む、人気歌人・岡野大嗣さん初の短歌×散文集です。
さまざまな場所をテーマに、
短歌を詠むときのまなざしから生まれた散文とたね(短歌が出来上がる前のメモ)、150首の短歌をもとに、〈夏のとある街〉を作りました。
今まさにその場所にいるような、その場所とつながっているような感覚になれる新しい本。
さまざまな場所と出合いなおすことで、
短歌と散文、感情が響き合って、懐かしさとともに新しい風景があふれだします。
ぜひ、短歌の世界と歌人のまなざしを追体験しながら
うたとたねをヒントに、夏のとある街の地図を心に描いてお楽しみください。
※装画・挿絵:中村一般さん
<岡野大嗣さんよりコメント全文>
タイトルに「夏休み」と入れておきながら僕は、夏があまり得意ではありません。
命の危険を感じる暑さからも、ただ生き延びることにやたらと意味を浴びせてくる光からも、なるべく距離を置いていたい。
でも、夏にふと感じる、ほっとするようなさびしさとは握手をしたくなります。
暑さを逃れて立ち寄った本屋さんで迎えてくれる涼しいインクのにおい。信号待ちの日傘に感じるなつかしい気配。図書館の片隅で空調の音に包まれてめくられるページの響き。
この本には、そんなさびしさが集まっています。
時間はたっぷり百年用意しました。
いくらでものんびりと、この街で涼んでいってくださいね。