師弟関係には三つの類型があると著者は言う。師による弟子の破壊とその逆、そして相互信頼。西欧に限っても、それらは複雑で微妙な例をいくつも変奏し、理解はとうてい一筋縄にはいかない。ソクラテスとアルキビアデス、ウェルギリウスとダンテ、アベラールとエロイーズ、ブラーエとケプラー、フッサールとハイデガー…。本書は、哲学や文学、宗教から、自然科学、スポーツ、音楽までを見渡しながら、教える者と教わる者との関係が露わにする諸相を卓抜な筆致で描き出す。教育とはいかなる営みか。教師は教え子に何を伝えるのかー。稀代の批評家が文業の極致を示した傑作、待望の文庫化。