孔子・老荘ほかの諸子百家や先賢の思想を伝える漢籍は、日本では客観的知識という以上に、「尊い教えを学ぶための古典」として信奉されてきた。また、近代人文学の対象となってからは、専門化・細分化がすすみ、ときに西洋哲学の概念が安易に転用されることもあった。本書はそうした伝統や枠をこえて、各々が形成された時代背景を踏まえつつ、民族の社会・生活に根差した「総合的な知」として中国思想を描きなおす。上代から現代までの巨大な潮流を時系列で追い、この一冊で中国思想史を読みきることができる名著。
はじめに
上代の思想
一 時代の概観
二 「論語」と孔子の思想〔1 「論語」の内容 / 2 「論語」の構成/ 3 孔子の伝記/ 4 孔子の思想/ 5 人間としての孔子〕
三 道家思想の展開〔1 老子の実在性 / 2 「老子」の成立/ 3 「老子」の思想 / 4 荘子と「荘子」/ 5 「荘子」の世界 〕
四 諸子百家〔1 孟子と荀子 / 2 墨家の主張 / 3 法家の人々 / 4 孫子の兵法 / 5 名家の議論 / 6 享楽思想と養生説 / 7 陰陽説・五行説 / 8 呂氏春秋 〕
漢代の思想
一 時代の概観
二 前漢の思想界〔1 漢初という時代 / 2 易について / 3 儒教の官学化 〕
三 後漢の学術〔1 今古文の論争 / 2 訓詁学の形成 / 3 桓譚と王充 / 4 王莽の出現まで〕
六朝・唐代の思想
一 時代の概観
二 魏晋の社会〔1 玄学と清談 / 2 仏教の流伝 / 3 道教の成立 〕
三 唐代の学芸〔1 経学の統一/ 2 詩人の心象 〕
宋・明の思想
一 時代の概観
二 宋代の儒学〔1 宋学の特質/ 2 宋学の意義〕
三 明学の推移〔1 王陽明の学説 / 2 陽明学の展開〕
清代の思想
一 時代の概観
二 考証学の建設〔1 明学から清学へ / 2 実事求是の学〕
三 近代の胎動〔1 清末の公羊学 / 2 清学の終結 〕
現代の思想
あとがき
文庫版著者あとがき
文庫版解説 時代を超えてよみがえる教養の書 湯浅邦弘
参考文献
中国思想史略年表
索引