支那事変(日中戦争)の特徴は、戦争遂行と和平への努力が、ほぼ全期間を通じ並行してなされたことにある。この和平工作の舞台には外交官のみならず、中国通の経済人やジャーナリストなど様々な人物が登場した。本書はまず、極秘裡になされたがゆえに捉えづらい和平工作の基礎事実を確定し、これに従事したピース・フィーラーたちの実像を描き出す。宇垣工作、汪兆銘工作をはじめとする数多の試みは、なぜ一つとして成功しなかったか。日本側の事変処理政策や政府声明の決定過程を詳しく追跡することでその原因を解き明かした。日中関係、戦時外交を考えるうえで欠かせない名著。
序章 和平工作研究の意味
第一章 政略出兵から全面戦争へ
第二章 和平の模索
第三章 「対手トセス」声明再考
第四章 事変処理構想の変遷
第五章 和平工作の交錯ーー宇垣・孔祥熙工作を中心として
第六章 「日支新関係調整方針」の策定と汪工作
終章 和平工作の視点から見た支那事変
あとがき
文庫版あとがき
注
参考文献
解説 もう一つの日中戦争ーー「和平」と「謀略」の交錯(波多野澄雄)
人名索引