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タイトル |
もっとうまくいく緩和ケア(モットウマクイクカンワケア) |
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一歩進んだ緩和ケアの薬剤処方が身につく/緩和ケアにおける臨床推論が学べる
ガイドラインや教科書の通り診療しても苦痛が緩和されない…,実際の患者は病態が複雑に併存していて対応に困る….そんな現場の悩みに答える一冊.がんの疼痛緩和・症状緩和では近年薬剤の選択肢が広がる一方,その使いこなしに難渋する医療者は少なくない.本書では症例に沿って,診断と治療選択に至るまでの著者の思考過程(臨床推論)をたどり,薬理学的知識と経験に裏打ちされた処方の実際を示す.本書を読めば患者がしあわせになる薬の使い方が身につき,緩和ケアの臨床は“今よりもっと,うまくいく”.
【書評】
リアルな臨床現場で頼れる実践的な緩和ケアの必読書
一般的な教科書やガイドラインだけでは太刀打ちできないのが緩和ケアのリアルな臨床現場である.緩和ケアが必要な患者は一般化できない個別性の高い状況にあることが多く,医学的なエビデンス,医師の経験,患者の選好をバランスよくミックスすることで最善の緩和ケアが提供できる.本書では,医学的なエビデンスを熟知した著者の20 年の緩和ケアの臨床経験から生まれたクリニカルパールが具体的な症例としてまとめられている.質の高い緩和ケアを実践したい医療者にとっての必読書である.
本書は,緩和ケアで最も高頻度に遭遇する痛みの多彩な症例が紹介されている.症例の形式で,「アセスメント」「副作用などのピットフォール」「基本的な薬物療法」「高度な薬物療法」が網羅されている.また,難易度が3 段階でレベル分けされており,緩和ケアの入門者から熟練者まで学べる内容となっている.日常診療では使用頻度の低い薬剤に関しては,具体的な投与方法が詳細に記載されており,未経験者でも実際の臨床に活用できる配慮がされている.
痛み以外の比較的頻度の高い症状や病態,知らないと見逃してしまうような副作用も紹介されており,この1 冊でおおむねの患者へ質の高い緩和ケアが提供することができるであろう.
病態・症状別の目次や診療アルゴリズム,薬剤別の目次などが読者の使いやすさにも配慮され構成されている点にも,著者の「目の前の患者の苦痛にすぐに対応してもらいたい」という思いがうかがえる.
筆者自身,著者とともに臨床現場で働き,著者の妥協のない迅速な対応で患者がすぐに笑顔にしあわせになる場面をたくさん経験してきた.その臨床現場での思考過程や対処法が集約された本書が,患者のしあわせを願う医療者によって活用され,高度な緩和ケアが多くの患者に提供されることを期待する.
臨床雑誌内科129巻3号(2022年3月号)より転載
評者●埼玉県立がんセンター緩和ケア科 副部長 中西京子