「生まれてきたからにはこれが仕事だと言えるような何かがあるはずだ」──。
アメリカ在住の日本人ノンフィクションライターが、引っ越し作業中にふと手にした一冊の本。それは50年前の世界的事件を追うことになる迷路の入り口だった。半世紀前の1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ空港で起こった乱射テロ事件。起こしたのは3人の日本の若者たちだった。彼らはなぜ遠い異国の地でそんな事件を起こしたのか。それは崇高な使命感からだったのか、それとも別の残虐非道な目的からだったのか。そして、事件の首謀者・渡良瀬千尋が短い生涯で遺したものとは。
正義と使命感に駆られた人間の「光と影」をリアルに描いた、文筆生活40周年、新境地を拓く著者渾身の長篇小説。
【著者からのコメント】
恋愛小説ではありません。歴史小説でもありません。今から約50年前に、世界で初めて空港で乱射事件を起こして、その後の世界秩序を塗りかえてしまったのが日本人であった、という事実を今の日本で認識している人はどれくらいいるでしょうか。これは負の事実かもしれません。しかし、事件を起こした人物(私の高校の先輩)を、私はどうしても全面的に否定できないのです。なぜなのか? その理由を知りたくて、この作品を書きました。