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タイトル |
文化装置としての日本漢文学(ブンカソウチトシテノニホンカンブンガク) |
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古代から近代まで、日本人は、つねに漢詩や漢文とともにあった。
本書は、最新の知見を踏まえた分析や、様々な言語圏及び国・地域における論考を集め、日本漢文学についての新たな通史的ヴィジョンを提示する。
研究史を概括しつつ、とくに政治や学問、和歌など他ジャンルの文芸などとの関係を明らかにしながら、文化装置としての日本漢詩文の姿をダイナミックに描き出す。
1 古代・中世漢文学研究の射程
平安朝漢文学の基層ー大学寮紀伝道と漢詩人たち 滝川幸司
長安の月、洛陽の花ー日本古典詩歌の題材となった中国の景観 高兵兵
後宇多院の上丁御会をめぐって 仁木夏実
誰のための「五山文学」かー受容者の視点から見た五山禅林文壇の発信力 中本大
2 江戸漢詩における「唐」と「宋」
語法から見る近世詩人たちの個性ー“エクソフォニー”としての漢詩という視点から 福島理子
室鳩巣の和陶詩ー模倣的作詩における宋詩の影響 山本嘉孝
竹枝詞の変容ー詩風変遷と日本化 新稲法子
近世後期の詩人における中唐・晩唐 鷲原知良
3 東アジア漢文交流の現実
通信使使行中の詩文唱和における朝鮮側の立場ー申維翰の自作の再利用をめぐって 康盛国
蘇州における吉嗣拝山 長尾直茂
4 漢詩・和歌が統べる幕末・維新期の社会
幕末志士はなぜ和歌を詠んだのかー漢詩文化の中の和歌 青山英正
漢詩と和歌による挨拶ー森春濤と国島清 日野俊彦
西郷隆盛の漢詩と明治初期の詞華集 合山林太郎
5 近代社会の礎としての漢学ー教育との関わりから
明治日本における学術・教学の形成と漢学 町泉寿郎
懐徳堂と近現代日本の社会 湯浅邦弘
6 新たな波ー世界の漢文学研究と日本漢詩文
英語圏における日本漢文学研究の現状と展望 マシュー・フレーリ
朝鮮後期の漢文学における公安派受容の様相 姜明官(康盛国訳)
越境して伝播し、同文の思想のもと混淆し、一つの民族を想像するー台湾における頼山陽の受容史(一八九五〜一九四五) 黄美娥(森岡ゆかり・合山林太郎訳)