|
タイトル |
路地裏をさまよった伯爵夫人(ロジウラヲサマヨッタハクシャクフジン) |
|
〈奥様が帰宅されました〉
伯爵は手渡された紙を、握り潰したーー
ロンドンの路地裏の下宿屋に暮らすパーディタは、
3カ月前に市場町で旅一座に拾われ、経理や衣装管理の仕事をしている。
じつは彼女にはそれ以前の記憶がない。“パーディタ”も仮の名だ。
ある日、仕立屋で用事を済ませ、急ぎ自宅に足を向けたつもりが、
なぜか下宿屋ではなく大きな屋敷に帰り着いてしまった。
「お、奥様」驚き顔の執事に中へ招き入れられ、彼女は混乱した。
奥様って……? 私は何者でもない、名もなき路地裏の住人だけれど。
しかし、どこか見覚えのある部屋に通されてしばらくすると、
怒った男性ーーエピング伯爵が雷のごとく飛び込んできて言い放った!
「君への要求はただ1つ。私たちの子供がどうなったかを話すことだ!」
伯爵の顔を見たとたん、彼が夫だとわかったパーディタこと、エピング伯爵夫人メアリー。“私たちの子供”と聞いて、自分に子供がいたのかと彼女は驚きますが、怒濤のごとく押し寄せた感情に心が乱れ……。リージェンシー・ロマンスの大スター作家による傑作!