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タイトル |
核燃料サイクルという迷宮(カクネンリョウサイクルトイウメイキュウ) |
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日本のエネルギー政策の恥部とも言うべき核燃料サイクル事業は、行き場のない放射性廃棄物(核のゴミ)を無用に増やしながら、まったく「サイクル」できないまま、十数兆円以上を注いで存続されてきた。本書は核燃料サイクルの来歴を覗き穴として、エネルギーと軍事にまたがる日本の「核」問題の来し方行く末を見つめ直す。
日本では、戦前から続く「資源小国が技術によって一等国に列す」という思想や、戦間〜戦中期に構造化された電力の国家管理、冷戦期の「潜在的核武装」論など複数の水脈が、原子力エネルギー開発へと流れ込んだ。なかでも核燃料サイクルは、「核ナショナリズム」(疑似軍事力としての核技術の維持があってこそ、日本は一流国として立つことができるという思想)の申し子と言える。「安全保障に資する」という名分は、最近では原子力発電をとりまく客観的情勢が悪化するなかでの拠り所として公言されている。
著者はあらゆる側面から,この国の「核エネルギー」政策の誤謬を炙り出している。地震国日本にとって最大のリスク・重荷である原発と決別するための歴史認識の土台、そして、軍事・民生を問わず広く「反核」の意識を統合する論拠が見えてくる労作。
いくつかの箴言──序文にかえて
序章 本書の概略と問題の提起
0.1 核発電の根本問題
0.2 核のゴミとその後処理
0.3 高速増殖炉について
0.4 核燃料サイクルの現状
0.5 核ナショナリズム
第1章 近代日本の科学技術と軍事
1.1 日本ナショナリズムの誕生
1.2 資源小国という強迫観念
1.3 国家総動員とファシズム
1.4 革新官僚と戦時統制経済
1.5 戦時下での電力国家管理
第2章 戦後日本の原子力開発
2.1 核技術とナショナリズム
2.2 日本核開発の体制と目標
2.3 原子力ムラと原発ファシズム
2.4 岸信介の潜在的核武装論
2.5 中国の核実験をめぐって
2.6 核不拡散条約をめぐって
第3章 停滞期そして事故の後
3.1 高度成長後の原発産業
3.2 原発推進サイドの巻き返し
3.3 核発電と国家安全保障
3.4 原発輸出をめぐる問題
3.5 原発輸出がもたらすもの
3.6 世界の趨勢と岸田政権
第4章 核燃料サイクルをめぐって
4.1 再処理にまつわる問題
4.2 再処理のもつ政治的意味
4.3 高速増殖炉をめぐる神話
4.4 核燃料サイクルという虚構
終章 核のゴミ、そして日本の核武装
あとがきにかえて
参考文献
人名索引
事項索引