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本書は有機分子から金属錯体にわたるさまざまな分子集合体の磁性について解説したものであり,本書をとおして分子磁性の実践的な解析ができるよう執筆されている.大学学部高学年から大学院生,企業研究者,学際領域の研究者など,分子磁性の入り口に位置する初学者の教科書的な役割を果たすことを目的としているが,そればかりではなく物性化学や物性物理学の研究者が分子磁性を研究するときの参考書的な役割も果たす充実の書である.
【目 次】
第1章 分子磁性の基礎
1.1 はじめに
1.2 磁性の単位系
1.3 反磁性
1.4 常磁性
1.5 磁気相互作用の起源
1.6 磁気相転移と磁気整列状態
第2章 有機分子の磁性
2.1 有機ラジカルの電子状態
2.2 有機ラジカルの強磁性
2.3 高スピン有機ラジカル
2.4 ナノグラファイトの端に現れるスピン分極と強磁性
2.5 電荷移動相互作用と強磁性
第3章 遷移金属錯体の磁性
3.1 3d電子系の多重項と基底状態
3.2 4f電子系の多重項と基底状態
3.3 強磁性の分子設計
第4章 低次元磁性体
4.1 有限鎖の磁性
4.2 一次元磁性体
4.3 スピンの型と二次元磁性体
第5章 スピンフラストレーションの磁性
5.1 三角格子磁性体
5.2 カゴメ格子磁性体
5.3 ダイヤモンド鎖磁性体
第6章 多核錯体の磁性と単分子磁石
6.1 多核錯体の磁性
6.2 スピンハミルトニアンとゼロ磁場分裂
6.3 単分子磁石
6.4 単一鎖状錯体の分子磁石
第7章 スピンクロスオーバー錯体と磁性
7.1 3d電子系における高スピン状態と低スピン状態
7.2 田辺–菅野準位図から眺めたスピンクロスオーバー現象
7.3 代表的なスピンクロスオーバー錯体
7.4 温度誘起低スピン–高スピン転移の機構
7.5 光誘起低スピン–高スピン転移
第8章 電荷移動を伴う分子磁性
8.1 混合原子価状態と電荷移動相転移
8.2 電荷移動誘起スピン転移
8.3 原子価互変異性
第9章 発展する分子磁性
9.1 室温強磁性体の分子設計
9.2 スピンクロスオーバー現象の新しい展開
9.3 キラリティと分子磁性
9.4 局在スピンと伝導電子の相互作用
9.5 単分子磁石とスピントロニクス
付録A 磁性の単位系
A.1 SI単位系
A.2 SI単位系とCGS単位系の換算
付録B 配位子場理論
B.1 3d電子系の多重項と基底状態
B.2 4f電子系の多重項と基底状態