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タイトル |
ニューヨーク精神科医の人間図書館(ニューヨークセイシンカイノニンゲントショカン) |
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「かれらにはわからないさ。
それがどんな気分かなんて」
「誰にでも起こりうることよ」
「結局、“意志”の問題じゃないんですか?」
人種的マイノリティ、統合失調症患者、
ホームレス、トランスジェンダー……
アジア系移民のニューヨーク精神科医として
出会った患者たちの、要約できない人生の断片。
【内容】
デンマークから始まった「人間図書館(Human Library)」では、利用者は「本」ではなく貸し出された「人」と30分程度会話をすることができる。民族的マイノリティ、エイズ患者、移民、統合失調症患者、ホームレス、トランスジェンダー、失業者など、さまざまな人が貴重な時間を貸し出してくれるおかげで、この図書館は維持される。他人に向けられたスティグマ(負の烙印)や偏見を解消し、共存の意味を考え直そうという意図で始まったこのプロジェクトは、いまでは世界80数カ国で進められているという。
大学で心理学を勉強したのち、自殺予防に寄与したいと思い精神科医に転向した著者にとって、この初となる著作は、まさに「人間図書館の書庫の片隅の物語」だ。本編には、メイヨークリニックとニューヨーク大学の研修医を経て、イェール大学で依存症精神科専任医課程を終えるまでに出会った、さまざまな患者が登場する。人種も性別も年齢も職業もジェンダー・アイデンティティも異なるが、共通するのは皆、社会的に脆弱な立場にあるということだ。
“人間図書館で人と人がお互いを知り、触れ合う過程は、精神科医と患者との面接に非常によく似ている。人生において、自分とまったく違う世界を生きている人と会話するようなことがどれだけあるだろうか。(…)私は人間図書館のように、私の患者と他の人の橋渡しをするような本なら、世に出すに値するのではないかと考えるようになった。”
ーーはしがき
差別、偏見、スティグマを乗り越え、共に生きる一歩を踏み出すために。子どもから大人まで、幅広くお薦めしたいエッセイ集。
はしがき 他人の人生を理解するということ
1 ニューヨークで出会った人々
ふたりのあいだの距離
ニューヨークのホームレス、ホームレスのニューヨーク
あの人がいなくなったことが信じられません
記憶を共に歩く時間
ひとりの命を救うということ
人種的マイノリティの子の親として生きるということ
アーモンドお婆さん
2 共感するにも努力がいる
わからないさ、それがどんな気分かなんて
誰にでも起こりうることだ
彼女の靴を履いて歩く
共感と同情、そのあいだのどこか
共感を超え、苦痛を分かち合うこと
3 スティグマに負けない人生
研修医の先生がいいです
双極症は私の一部に過ぎない
大丈夫じゃなくても大丈夫
依存症は意志の問題だろうか
自殺は「極端な選択」ではない
自殺予防は可能だろうか
勇気を出してくれてありがとう
あとがき さらば、ニューヨーク
日本語版あとがき ただひとりの勇気のために
参考文献