本書は、ファンタジーの世界を描く画家・絵本作家のたなかしんが、人生を「命の旅」と捉え、誕生から魂が大地に帰るまでの命の旅に出て、旅先の風景を描き、そのとき感じた思いを書き綴った画文集です。絵描きの旅人として、たなかしん自身がこれまで訪ね、描いた土地の風景や印象的な情景は、ファンタジーの世界に迷い込んだかのように美しい。その土地の空気感を光で表現した風景画からは、画家の思いが溢れてくるような物語性を感じます。ふと目を横に転じれば、そこには「命の旅」の途上で感じたささやかなことが優しい言葉で綴られており、読者をその世界に引き込みます。日本、イタリア、オランダ、ドイツ、デンマーク、フィンランド、ドバイ……いっしょにさまざまな土地を旅したような気分になれるのは、絵と言葉で綴られた画文集だからこそ。たなかしんの文章には、心がキュンとしたり、ちょっと背中を押してくれるような優しいフレーズが散りばめられているので、たなかしんの絵の世界だけでなく、その言葉が好きだというファンも多い。ストレス時代を生き抜く大人にこそ読んでほしい、読後感が心地よい本です。