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自由を求めて欲望のままに生きた「逸脱者」たち
独身、同性愛、フェティシズム、サド=マゾヒズム……
激動の近代、既存の枠組みに収まらない人々はどう生きたのか?
逸脱にはさまざまな形が存在する。規範があるから逸脱があり、規範がなければ逸脱も存在しない。逆に逸脱の多様性は、社会を規定する明示的、あるいは暗黙の規範を浮き彫りにする。近代フランスの社会は、男女の身体、情動、欲望をめぐってどのような規範を課し、逸脱はどのように表象されたのか? 小説、自伝、日記、医学書、性科学の啓蒙書などの言説をつうじて読み解いていく。
はじめに
規範と抵抗/逸脱と病理の位置づけ/本書の構成
第1部 女たち
第一章 若い娘たちの表象──魂から身体へ
「若い娘」という形象/「夢の女」たちの系譜/夢の女から若い娘へ/
ロマン主義時代の若い娘/「生理学」の言説/十九世紀末における若い
娘の変貌ーーモーパッサンとグールモン/エドモン・ド・ゴンクール作
『シェリ』の意図/若い娘の身体と病理
第二章 感応遺伝という神話
感応遺伝とは何か/先駆者プロスペル・リュカの著作/ミシュレと愛の
言説/ゾラの『マドレーヌ・フェラ』/ギヨームの嫉妬と苦悩/マドレ
-ヌと身体の宿命/救済なき原罪/世紀末文学からテレゴニーへ
第三章 逸脱した女たち
『ヴィーナス氏』あるいはセクシュアリティーの転倒/サディズムから
両性具有へ/フラートする女たち/マルセル・プレヴォーの『半処女』
/モードの選択の両義性/フラートとブルジョワ娘の反応/「ギャルソ
ンヌ」の時代/モニックの生き方/社会現象としてのギャルソンヌ
第2部 男たち
第四章 独身者の肖像
人口減少の脅威/性科学が結婚を推奨する/独身者は社会の脅威であ
る/独身者の実態とイメージ/ボヘミアンとダンディー/女の独身者
たち/女嫌いの文学/芸術と家庭の対立
第五章 倒錯の性科学
倒錯という現象/同性愛者の身体/『ソドムとゴモラ』/サディズム/
マゾヒズムーールソー『告白』/秘められた悦楽/マゾヒズムの原型
--『毛皮を着たヴィーナス』/『ナナ』から『O嬢の物語』へ
第六章 フェティシズムの誘惑
宗教から性科学へ/ビネによるフェティシズムの分類/性科学から法医
学へ/クラフト=エービングとフロイト/『ムッシュー・ニコラ』--
足のフェティシズム/オクターヴ・ミルボー『ある小間使いの日記』/
温室のエロス/髪の誘惑
第七章 変質論の系譜
時代の強迫観念/変質論の展開/変質とユイスマンスの『さかしま』/
ゾラと変質論の変奏
おわりに
あとがき
注
索引