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タイトル |
教育のプロがすすめるイノベーション(キョウイクノプロガススメルイノベーション) |
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本書は、教育の現場にイノベーション(新しくてよりよい価値の創造)をとりいれるための最良の手引きです。著者は常に「学習者ファースト」の姿勢で、「常識にとらわれず、最善を尽くそう」とくりかえし読み手に呼びかけます。「学習者」のなかには、生徒はもちろん、教師や管理職、保護者や地域の人々など、すべての人が含まれます。その意味では、主な読者対象である教育関係者以外の方々にも、大いに刺激を与える情報が満載です。
しかも、著者はたぐいまれなストーリーテラーです。読者を惹きつけるのは何よりも「物語」であることを知っているのです。読者のみなさんはきっと、まるで「教育」をテーマにした小説を読んでいるような気になることでしょう。
パート1では、教育におけるイノベーションとは何かが解説されます。著者は言います、「絶えず変化する世界では、すでに行われていることを維持し、それに焦点を当てるだけでは、事態は悪化してしまうかもしれません」。教室や学校が前進するためには、「イノベーターのマインドセット(考え方)」を身につけることが欠かせないと説きます。そして、そのような考え方ができて、周囲にもそれを伝えることのできる教育者の特徴を挙げます(自己診断と今後の指針に有益です)。
続くパート2では、「イノベーターのマインドセット」を基盤とした文化を学校や教育委員会などの場でつくり出す方法、パート3ではイノベーターの輪を広げる方法、最後のパート4では「いまどこにいて、どこに行きたくて、どうすればそこへ行けるのか」が書かれます。
著者は数々の現場で実績を挙げてきた、まさに教育のプロですが、説教臭さや自慢は微塵もありません。ワクワクするようなヒントや問いをあちこちにちりばめ、最初から最後まで読者を励まし続けます。読めばあなたも自分の能力を信じることができ、すぐにでも動き出したくなるにちがいありません。この夏にぜひ本書を読んで、その中から気に入ったアイディアをいくつか抽出し、秋から実行に移してください。(よしだ・しんいちろう)