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タイトル |
折口信夫の戦後天皇論(オリクチシノブノセンゴテンノウロン) |
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敗戦という未曾有の出来事を「神やぶれたまふ」と表現した折口信夫。やがて〈神〉から〈人間〉となった天皇や、「神道指令」後の日本神道に、彼はいかなる可能性を見出そうとしたのか。
「「女帝考」はなぜ書かれたか」「日本神道の〈対抗宗教改革〉プラン」「神と精霊の対立というパラダイム」「〈新国学〉の戦前と戦後」など、折口学の深淵へと果敢に挑んだ論考を収め、擁護や否定といった単純な枠組みを超えた折口理解“第三の道筋”を切り拓いた画期的労作。解説=三浦佑之
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本書『折口信夫の戦後天皇論』(法藏館)の主題は、そのタイトルが示している通り「天皇」の問題であった。そこでは、戦前から戦後へと生き抜いた折口信夫の、「天皇」に関する認識の揺れと変貌という問題が、中村生雄にとってはもっとも重大な関心事だったのである。大雑把な言い方になるが、……近年の折口論との違いはそこにあり、本書が、いま新たに文庫版となって刊行される大きな意義もそこにあると言ってよい。(「解説」より抜粋)
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第1部 折口信夫の戦後天皇論
1「女帝考」はなぜ書かれたか
敗戦の衝撃と象徴天皇制/〈神の嫁〉というメタファー/ナカツスメラミコトと宮廷高巫/「系図につながる神」の否定
2日本神道の〈対抗宗教改革〉プラン
折口信夫の敗戦認識/「われ神にあらず」/「天子非即神論」にいたるまで/「むすび」の神による〈対抗宗教改革〉/「系図につながる神」とは何か/神道宗教化のゆくえ
第2部 折口古代学の基礎理論
1 神と精霊の対立というパラダイム
〈海やまのあひだ〉の旅/海の神と山の神の交替/日本の神の系統論の挫折/神と精霊の対立というパラダイム/文学・芸能・国家をつらぬく一般理論/昭和三年の折口古代学
2 〈神〉観念と〈性〉のメタファー
〈新嘗の女〉のイメージ/〈タマヨリヒメ〉から〈神の嫁〉へ/神と精霊の対立/精霊の〈性〉の分化/〈まひびと〉のゆくえ
第3部 折口信夫と柳田国男
1 『古代研究』の成立まで
「類化性能」と「別化性能」/柳田賛辞の裏側/柳田国男からの離脱/蓋然から生まれる学問/「新しい国学」の筋立て/柳田の神道批判と〈新国学〉
2 〈新国学〉の戦前と戦後
戦中の柳田国男と折口信夫/硫黄島の藤井春洋/『先祖の話』前後/「働かねばならぬ世」/「新国学談」と神道のゆくえ/なぜ〈新国学〉か?/〈一国民俗学〉のオートマティズム/失敗した〈新国学〉
第4部 終章
いま折口信夫をどう読むか
学問におけるスケープゴートづくり/折口学の〈体系〉は崩壊するのか?/折口批判において「戦争責任」とは何か?
あとがき
初出一覧
解 説(三浦佑之)