日本における供犠は、「食べる文化」であるーー。動物を「神への捧げもの」とする西洋の供犠との対比から、日本の供養の文化を論じ、殺生・肉食の禁止と宗教との関わりに新たな光を当てた名著が文庫化。
狩猟と稲作、供養と供犠、殺生肉食論の展開、動物と植物の供養など、多彩な比較文化的視座と豊富な事例により、稲作文化を超える日本人の多様な民俗と信仰、自然認識を探究する。解説=赤坂憲雄。
序章 祭祀と供犠の比較文化序説ーー〈血〉の問題を手がかりに
【第1部 動物供犠と日本の祭祀】
1 イケニヘ祭祀の起源ーー供犠論の日本的展開のために
2 動物供犠の日本的形態ーー古代中国との連続と差異をいとぐちに
3 狩猟民俗の身体観ーー〈食〉と〈生命〉のアルカイスム
4 非稲作の祭祀と神饌ーー〈自然〉と〈聖地〉のかかわりから
【第2部 日本宗教のなかの人と動物】
1 古代呪術と放生儀礼ーー仏教受容のアニミズム的基盤
2 祭祀のなかの神饌と放生ーー気多大社「鵜祭」の事例を手がかりに
3 殺生肉食論の受容と展開ーーとくに近世真宗教団の問題として
4 供犠の文化/供養の文化ーー動物殺しの罪責感を解消するシステムとして
5 動物供養と草木供養ーー現代日本の自然認識のありか
【第3部 柳田国男の供犠理論】
1 人身御供と人身供犠ーー柳田国男と加藤玄智の「人身御供」論争から
2 「一目小僧」の供犠解釈ーーその意義と限界をめぐって
あとがき
初出一覧
解 説 (赤坂憲雄)