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タイトル |
アラビア哲学からアルベルトゥス・マグヌスへ(アラビアテツガクカラアルベルトゥス マグヌスヘ) |
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アルベルトゥス・マグヌス(1193頃ー1280)の『「原因論」註解』における、彼独自の形而上学である「流出流入論」を通して、一神教的宇宙論の展開を考察する。彼の流出流入論は、単純な新プラトン主義やアリストテレス主義ではなく、アラビア哲学で新プラトン主義的に解釈されたアリストテレス主義に触発されて一神教哲学を構築し、後に絶大な影響を与えた体系化の試みである。その背景には哲学と一神教の調和は可能かという時代の課題があった。アルベルトゥスにおける応答は神学と哲学を統合するスコラ学の形成に関わり、その反発として13世紀の信仰と理性の論争を深めることになった。1章ではアリストテレス『形而上学』を検討し、神は自身しか認識しないことを確認する。2章ではアヴィセンナの「神は自身を知性認識しつつ他のすべてのものを個別的にではなく普遍的に知性認識する」という説に対し、ガザーリー『哲学者の矛盾』の批判を確認し、さらにそれを受けて展開するアヴェロエス『矛盾の矛盾』における見解を検討する。3章ではアヴェロエス『矛盾の矛盾』におけるアリストテレスの神について吟味する。4章ではアルベルトゥスがアヴェロエスを踏襲しつつ発展させている見解を検討する。5章ではアヴィセンナ『治癒の書』の宇宙論とそれに対するアヴェロエスの批判を見るとともに、アルベルトゥスの宇宙論と流出流入論を考察する。付論では『「原因論」註解』の神名論を検討する。