時は23世紀、日本の南の果て、大海原のなかに、鉄塊の摩天楼がそそり立つ孤島「キノトリ区」がぽつんと突き出していた。イレズミだらけのならず者たちが力強く生きるその海上の街は、わずかながらもつねに沈み続けていて、人々はコンテナと呼ばれる箱状住居を積み重ねながら暮らしを維持していた。23歳の配達人・キューは、家族との縁は希薄だが、なんとか配達人として公務員になり、愛犬のコエダとともに街の上下に毎日荷物を運びながら、それなりの生活を不満なく営んできた。ある朝、キューはいつものように預かった荷物をひととおりあらためたが、時代遅れのラジオなどロクでもない代物しかない。仕方なく雑に封をし直し、海からの風が吹きあげる灼熱の街へと配達に向かったキューは、この日の誤配によって、思いもよらぬ世界に呑み込まれていく……。日本児童文学者協会新人賞受賞の注目作家と大人気イラストレータによる、息もつかせぬ新感覚SF長編!