◆特集「ケアの市場化の果てに」
「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」。2021年秋、岸田首相がそう言って掲げた「新しい資本主義」が注目されている。そこには、「公的部門」で働く人々への「分配」も含まれている。
しかし、2000年代以降、ケアや公共サービスの職場をここまで歪めてきたのは、その責任を国や自治体から営利企業に開放した「市場化」そのものにほかならない。同時に、自治体の内部さえも市場の論理に侵食されていった。この根幹に手をつけず、「分配」だけで何が変わるというのだろうか?
この20年間で市場がケアにもたらした変化を直視することが必要だ。特にケアワーカーたちの労働の現場では、一体何が起きてきたのか。低賃金、長時間労働、非正規雇用、サービスの質の劣化、利用者の虐待、事業撤退、「ブルシットジョブ」、外国人労働者……。保育、介護、教育、児童相談所、保健所などさまざまな分野から検証していく。そこから、ケアをめぐる新しい労働運動を構想していきたい。