[第一特集] 物価と公務員賃金
●物価上昇を上回る賃上げの波、公務から起こせ
2021年から世界規模でインフレが加速しています。これまで30年以上物価が動かなかった日本でも、輸入物価の上昇や円安等の影響を受けて2022年に消費者物価指数が上昇局面に入りました。
22年の春闘では、物価高騰のもとで実質賃金が下がらない水準のベースアップ確保が焦点になりましたが、コロナ前の水準である2%程度の賃上げにとどまりました。8月の人事院勧告の基礎となった職種別民間給与実態調査(民間事業所の4月分給与)では0.23%の官民較差しか出ず、それを受けた俸給表改定は原資が少ないために初任給近辺のみにとどまりました。公的セクターでも実質賃金低下が避けられない見通しです。
そもそも物価変動を直接反映しない人事院勧告制度は、インフレ時に公務労働者の生活を保障できず、公務員賃金の社会的影響力の大きさからも制度の弊害が大きくなっています。本特集では、長らく等閑視されてきた物価と公務員賃金のあるべき関係について議論します。
[第二特集] 研究者使い捨てと科学技術衰退
●研究者数千人が雇止めの危機
いまだに「日本は解雇規制が強くて雇用の流動化が低いから衰退している」「解雇規制緩和で日本はハッピーになる」などと主張する方がいます。各国2019年のOECD統計によると加盟38か国の中で日本の正規雇用の解雇規制は強い方から27番目、弱い方から12番目。非正規雇用の解雇規制の強さは30番目で正規も非正規もすでに解雇規制は緩和されています。文部科学省の統計によると国立大学の40歳未満の任期付き教員の割合は2007年の38.7%から2021年の68.2%へ毎年右肩上がりに増えています。そして、今回の第二特集の中で榎木英介さんが指摘しているように、日本のトップ10%の論文数は世界4位から12位へと大きく落ち込み、研究者の「雇用の流動化」が高くなればなるほど日本の科学技術は衰退しています。さらに2023年3月末、国立大学や国立研究機関の任期付き研究者数千人が雇止めの危機にある問題などについて第二特集では考えます。