全国には1600人のボートレーサーがいる。加えて、年に2回新人がデビューしてくる。
その数が1600人を超えると、成績下位の者から引退勧告を受けることになる。
「優勝劣敗」
レースの世界は、優っている者が勝ち、劣っている者が敗れるという厳しい道理が支配している。
このようなボートレースの世界に、還暦間近の名もなきレーサーがいた。
順位は1601位。このままでは引退勧告を迫れらるのは、ほぼ間違いない……。
彼には突然聴力を失ってしまった妻と、ダウン症の息子。脳卒中の父と、認知症の母、そしてコロナ禍……。
荒波のような人生で、負けつづけるレーサーが、1600人への生き残りをかけて、最後のレースに挑む。
1600位を目指すには奇蹟を起こしつづけるしかない。
名もなきレーサーの半生とその家族、師匠・弟子・友人たち。
彼、彼女らの半生も交錯しながらフィニッシュラインへと向かっていく。
「負けない」人たちのノンフィクション。
序章 スタートライン
第一章 レーサー、家を建てる。
第二章 レーサーの妻、燧石を打つ。
第三章 レーサーの末っ子、パンを焼く。
第四章 レーサーの師匠、ペラを打つ。
第五章 レーサーの弟子、水面に浮く。
第六章 レーサーの友、客を待つ。
第七章 レーサーの母、縁側に座る。
第八章 レーサーの長男、家を売る。
第九章 レーサー、レースに挑む。
終章 ゴールライン
あとがき