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タイトル |
さらば北陸本線 鉄路の韻き(サラバホクリクホンセン テツロノヒビキ) |
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今年、2024年3月16日に北陸新幹線が敦賀まで開業し、現北陸本線の敦賀ー大聖寺間がハピラインふくいに、大聖寺ー金沢間はIRいしかわ鉄道に、それぞれ移管されました。これにより、かつては米原ー直江津間を、新潟や青森、さらには札幌へと往来した寝台列車や特急・急行列車が駆け抜けた北陸本線は、敦賀までのJR西日本と、ハピラインふくい、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道(日本海ひすいライン)の5社に分かたれ、旅客列車の運転系統もそれぞれのエリアに限定されることとなりました(一部社線同士では直通運転が実施されています)。かつては大阪から金沢まで直通していた特急「サンターバード」、名古屋から金沢の特急「しらさぎ」とも、敦賀までの運転となり、長距離かつ長大編成の特急が快走する幹線としての北陸本線の姿は、過去のものとなりました。
北陸新幹線は大阪までの建設が計画されているものであり、1997年に開業した北越急行ほくほく線も直通特急「はくたか」の運転を2015年の金沢開業時点で終えるなど、この延伸開業はかねて予定されていたことであって、鉄道史の中の転換期の一幕として、失われゆく北陸本線を哀惜の一面からのみとらえることは、適切でないのかと考えます。また、東京直通が果たされた地域の方々のお気持ちに水を差すつもりもありませんし、そもそも北陸本線は、柳ケ瀬トンネル、山中越え、親不知ー頚城トンネル間の線路付け替えなど幾多の変転を乗り越えてきたのですから、その歴史に鑑みれば、一つの通過点であるのかとも思われます。
しかしながら、これまでの北陸本線の歴史は、日本の鉄道史上特筆すべきものであり、そのことを讃え、記憶にとどめるとともに、北陸本線をいとおしむ多くの読者の思いに応えることが、私と弊社にとって避けることのできない課題であると考え、本書の出版を企画致しました。『小説 碓氷峠』で旧信越本線横川ー軽井沢の碓氷越えを、『たまきはる海のいのちをー三陸の鉄路よ永遠に』ではBRT化された気仙沼線・大船渡線を含む三陸縦貫鉄道を描いた小田原漂情が、鉄道紀行文を主体に北陸本線の歴史とノスタルジーを紡いでいます。カラー口絵および貴重な図版・資料つきで(北陸本線旧線の杉津駅や、杉津駅付近の日本海を見渡す光景、E10やDD50、DF50など/ヨンサントオの時刻表の急行「霧島」「高千穂」の時刻など)、貴重な資料としての価値も持っています。
<目次>
序
さらば北陸本線
そして揖斐川〜「しらさぎ」との出会い
碓氷峠を超えた「白山」と「能登」
小説 鉄の軋み
さらば急行「能登」
遺構
小説 はるかなる雪の形見
急行「霧島」をヨンサントオの時刻表でたどる
紀行小説 気多の宵風
能登に捧げる頌(オード)
あとに