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タイトル |
紙屋悦子の青春(カミヤエツコノセイシュン) |
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日本映画に燦然たる功績を残した
黒木和雄監督(『父と暮せば』)の最後の魂のメッセージがここに…。
敗戦の色濃い昭和二十年・春。
両親を失ったばかりの娘・紙屋悦子は、鹿児島の田舎町で優しい兄・安忠、その妻・ふさと肩を寄せ合う慎ましい毎日をおくっていた。そんな彼女が胸に抱く願いは家族の平穏と、密かに想いを寄せる兄の後輩、海軍航空隊に所属する明石少尉の無事だけである。ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。それも相手は明石の親友・永与少尉で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしい。傷心を押し隠し、永与との見合いに臨む悦子。
当日、明石に連れられて紙屋家を訪れた永与は、緊張のあまり失敗を繰り返しながらも、悦子に真摯な愛情を示した。
「…戦争のどげんなるか…私もどげんなるかわからんですばって…私はもうあなたば…一人にしません」
必死で搾り出す永与の言葉に対し、僅かな沈黙の後、「はい」と答える悦子。
だが、悦子は衝撃的な事実を知らされた。明石が特攻隊に志願し、間も無く出撃すると言うのだ。
出撃前夜、悦子にその言葉を残し、満開の桜の下を去っていく明石。
「その夜、たった一人で泣き尽くした悦子。
数日後、悲痛な面持ちで明石の死を告げに来た永与には、残された者同士の哀しみをがあった。
明石が書き残したという手紙を永与から受け取り、封を開けずに握り締める悦子。
そして、勤務地が変わる事になったという永与が去ろうとした時、彼女は今度こそ胸の中に秘めた想いを口に出した。
「待っちょいますから…日本がどげな事になっても、ここで待っちょいますから…」
「…はい」
「きっと迎えに来て下さい」
見詰め合う二人の頭上、散り始めた桜の花びらが舞う。
これから共に長い人生を生きる二人の、結婚を決意した最初の一歩がはじまるのだった・・・。