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タイトル |
Sing-Song【アナログ盤】(シング ソング) |
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2009年、加藤りまはクリスティーナ・ロセッティが1893年に書いた詩を偶然書店で見つけた。
本の装丁や挿絵の美しさ、何よりそこに書かれていた詩に深い叙情性を感じたという彼女は、当時作っていた音楽に合わせて詩人の言葉を歌おうとした。
それは完璧な組み合わせだった。
ニューアルバムの製作はこうして始まります。ロセッティの詩集にちなんで『Sing-Song』と名付けられたこの作品は、
2015年にリリースされたアルバム『Faintly Lit』に続く、加藤りまの2ndソロ・アルバムです。
二つのアルバムは同時期から制作が始まりましたが、『Sing Song』は続編というより『Faintly Lit』の対になるような作品といえるでしょう。
2015年のアルバムが、かすかな灯(Faintly Lit)以上に荘厳で心地よい雰囲気に包まれているとしたら、
「Sing Song」は、より暖かく照らされた灯です。
「Our little baby fell asleep」などの曲では、ロセッティのビクトリア時代後期の童謡が、子ども部屋のカシオトーンのかわいらしさと、
フォーク・ギターの柔らかさに包まれた現代の楽曲へと生まれ変わります。既存の詩を再編することで、詩と歌の枠組みは注意深く構築され、
色彩豊かなレイヤーをまとった音楽が、ガラス細工のような繊細さと優しさをもって歌い上げられます。
クリスティーナ・ロセッティは、今日多くの人々からフェミニストの原型とみなされています。
ヴィクトリア朝の英国の深い保守主義と制限された社会構造の中で、教育を受け、自分のために働き、結婚することはありませんでした。
同じように社会における自らの立場を強く意識するようになった加藤りまにとって、こうして空間と時間の架け橋となった『Sing Song』は、
完璧な隠れ家となりました。彼女はロセッティの作品の中で同じ魂に偶然出会い、その眼差しの実直さと音楽的な挑戦によって、
126年前の詩の新しい具現化を成し遂げます。
おもちゃの楽器の繊細さとフォークギターの弾む弾む音に満ち、世界から遠ざかることから始まったこの橋は、
いつしか時間と空間を通じ、リスナーとロゼッティ自身の言葉をつなぐ、爽やかで勇敢な架け橋となったのです。
アルバムはクリスティーナ・ロセッティの初版にインスピレーションを受けた三宅瑠人による書き下ろしによる10インチ・レコードでリリース、
印刷技法を組み合わせた特殊仕様のジャケットになります。